直帰

ミンユンギとごはんたべたい

ネギを忘れてきた人

 

直帰です。

 

■朝起きて、散歩に行った。

 

■仕事はフレックスタイム制で、何時に開始してもOKなので、たまに気が向いたら朝の散歩をする。部屋着のまま、キャップだけ被って外を歩く。

 

■今日は辻井伸行さんのアルバムを聴いた。たまに聴くピアノクラシックは良い。誰でも簡単に、何かの主人公になれる。こういうときは思う存分エモりにいっちゃっていいのだ。どうせ朝はみんな忙しくて、誰も私のことなんて気にかけてないのだから。

 

■前方の坂を、自転車に乗った男の人がシューッとくだってきた。肩にかけたトートバッグからちっちゃいプードルが顔を出していた。飼い主の外出に、トートバッグに入ってまで付き合う必要があった犬。ただ歩かせることが目的の散歩ではなく、目的をもって移動している犬。可愛い。向かう先はどこだろう。

 

■前方の坂を、自転車でのぼっていく女の人もいた。背中のリュックにマタニティマークがついていた。命を授かっていますというメッセージを発信しながら走る自転車。誰かのマタニティマークを、自分の優しい行動につなげられた経験が私にはまだない。幸か不幸か、「見るからに困ってそうなマタニティの人」に出会ったことがないからだ。見た目じゃわからないだけで、本当は困っていたりするのかな。後ろ姿を見つめながら困ってそうなところを探したけど、見つけられなかった。転びませんように、と念を送ることしかできなかった。

 

■いつもの散歩コース。1駅ちょいくらいの距離を往復する。民家をぬけて、商店街に入る。魚屋の匂い、コーヒースタンド、カレー屋のスパイスの匂い。お腹すいてきた。お昼ごはん何にしよう。

 

■米の炊飯ボタンを押して家を出てきたから、帰る頃には炊けているはずだ。最近、米を炊くときは押し麦をまぜている。米よりも食物繊維が豊富なアレでアレらしいからだ。だいぶお通じがアレするのだ。

 

■一度だけ押し麦のみで炊いてみたことがあるんだけど、さすがに麦の風味120%すぎて「麦すぎ!麦すぎ!」となって笑ってしまった。すすんで食べたいアレじゃなかった。

 

■すごい、文章ってほとんどアレで通じるんじゃないか?色んな言葉を駆使してブログを書いていることの意味を疑ってしまうくらい、アレで通じる。これぞ日本語の、なんというかその、アレって感じで感動するぜ!!

 

■今日は米と押し麦を1:1にしてみた。「麦すぎ!」と感じるのは麦が何割を超えたときなのか?を探るための検証である。「これは米だ」と認識できるギリギリの配分を見つけた際には、ブログで共有しようと思う。麦すぎデッドラインの発見。ブログ開設以来はじめての有益情報となるかもしれない。

 

■あと、これをやるときいつも水加減に迷う。押し麦のパッケージの説明書きを見ても、たいてい「米1合に対して押し麦50gの場合」とかナメた量の水加減しか書いていない。なんだよ、みんなもっとギリギリを攻めろよ。「ギリギリ米として扱えるくらいの出来にする場合」の記載はないのかよ。

 

■仕方ない、ギリギリでいつも生きている端くれ者など、ハナからメーカーのターゲット層に入っていなくて当たり前なのだ。このナミダ、ナゲキ、未来へのステップ。水の適正量を思いっきりブチ破っても、リアルを手に入れるどころかズワズワのお粥のようなものが手に入ってしまうだけなので、ネットで調べた押し麦1合あたりの水の量を、ちまちま計算しつつ入れている。

 

 

■ああ、今日はビビンパが食べたいな。SOOP2でジン君が作っていたような、ツナ入りのやつ。ずっと前から放置してるツナ缶があるから、いい加減それを使ってしまおう。にんじんともやしもあるからナムルを作ろう。ほんとはほうれん草のナムルが一番好きなんだけど。まあ、あるものでいいや。

 

 

■商店街の中に、お気に入りの八百屋がある。昔は八百屋なんて相撲と同じくらい興味なかったけど、一人暮らしを始めてから八百屋が好きになった。自炊をサボる天才である私のような人間には、近所に品揃えのいい八百屋があることは、生活を根底から支えてくれる財政の基盤なのだ。八百屋をちょっと覗いてみることにした。

 

■八百屋の前までくると、「本日大安売り!ほうれん草1袋78円」というデカデカとしたPOPが目に飛び込んできた。なんということだ。たまたまほうれん草のナムルが食べたいと思った日に、こんな偶然があるなんて。耳のイヤホンから流れるドビュッシーアラベスクが、クライマックスを迎える頃、私はほうれん草をしっかりと抱きしめてレジに並んでいた。

 

■お会計をすませてサッカー台で袋詰めしていると、突然「ネギを忘れたんやけど!」という声が聞こえた。振り返るとパーマ頭のおばさんが、若い男の店員に何事か訴えていた。

 

■どうやらおばさんは、さっき買ったネギをレジのとこに置き忘れたまま店を出てしまい、戻ってくると無くなっていたらしい。私のネギはどこやろか?!と訴えるおばさんに、店員はレシートありますか?と冷静に聞き返していた。確かに証明するものがないとダメだよな。ナイス対応だ。このおばさんが新手のネギ泥棒である可能性も、絶対ないとは言い切れないのだから。

 

■お金だけ払って満足して、ネギを置いて手ぶらで出ていったおばさんを想像してちょっと笑いそうになってしまった。どう展開するのか気になって、絶対買わない白イチゴの棚を見るフリをしながらゆ~~~~~っくり自分のほうれん草を袋詰めした。

 

■しばらくするとおばさんの友達がやってきた。「ネギあったんか~?!」とサッカー台の全員が振り返るほどの大声でネギの安否を確認したあと、店員のところへ行き、私も隣で見てましてん、この人がネギ買うたんやけどねえ、レジのとこに忘れてしもて…とおばさんの訴えに加勢した。

 

■ネギをめぐるおばさんVS店員の攻防は、ほんの1~2分ほどで終結した。別の店員が、「ありました~!ネギ~!ネギありました~!」と叫びながらネギの入った買い物かごを天高く持ち上げて店の奥から出てきたのだ。サッカー台にいた全員が胸をなでおろした。今日も食卓の平和は守られた。

 

■八百屋を出て、隣のスーパーに入った。ナムルに必要なごま油を切らしていたので、大きいボトルのを買おうと思った。調味料の棚にいくと、「本日大特価!ヘルシーごま油100円」というPOPが目に飛び込んできた。なんということか。神、ひょっとして私のこと好きなのか?たまたまナムルを作りたいと思った日に、2度も奇跡が起きている。これがベガスのカジノだったら、一夜にして大金持ちになっているところだ。危なかった。私にはまだ大金持ちになる度量が足りてない。そういうのは自分の力で積み上げていかないと。イヤホンの辻井伸行が、高らかにラ・カンパネラを奏でた。

 

 

■実に充実した散歩だった。めちゃくちゃ機嫌よく帰宅した。

 

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■完成したビビンパ。カレーとかをぐちゃぐちゃに混ぜるのは見るのも苦手だけど、ビビンパだけは思いっきりぐちゃぐちゃにしたくなる。クレヨンで描く子供の絵のようだ。とてもおいしくいただいた。

 

 

お先に失礼します。