直帰

ミンユンギとごはんたべたい

元カノ人格を抜くことでSeesaw克服してみた

 

直帰です。

 

 

Seesaw

 

 

■この単語を見るだけで一旦ブラウザを閉じて深呼吸する人もいるんだろうな。

 

 

■2018年に発表された「Trivia 轉 : Seesaw」。ご存じSUGAさんのお家芸ともいえる、爆裂号泣リアコ誘発危険度SSS級楽曲史に燦然と輝く名曲である。

 

 

■これほどまでに、世界中のファンの心に消えない爪痕を残し続ける曲があるだろうか。たった4分と数秒間のこの曲が、ヒトの記憶を司る大脳皮質にいとも簡単に入り込み、今まで人生で培ってきた思考回路を作り替え、「私はひょっとしてSUGAの元カノだったのでは」という記憶のバグを引き起こす。今日も世界のどこかで顔も知らない元カノを生み落とし続けているという、まさにとんでもない曲だ。

 

 

■発表から今に至るまで、一体何人がSUGA無しで生きれない体にされたのだろう。私も初めてこの曲を知った頃は、今すぐ全国の病院に心療SUGA内科を作って保険適用にしてくれと願った。仕事をしていても食事中でも、SUGAさんとの切ないすれ違いの日々が頭の中で錯綜してしまうのだ。

 

■お互いに想い合っていたはずが、いつしか噛み合わなくなった生活リズム、絶えない喧嘩……。あの頃は向き合うことから逃げていた、もっと話し合うべきだった、ああするべきだった、こうするべきだった、ウエーン、どうか、どうかもう一度~~~~!!!!!

 

 

■書いてて怖い。全部無いのだから。「あの頃」もなけりゃ「次」も無い。無い過去から無い未来に向かってグルグル回る、虚無のPDCAサイクル。怖い。

 

 

■これはSUGAファンあるあるだと思うけど、この世で最もBGMに向いてないのはSeesawである。運転中にシャッフルで流れてくると動転して事故りそうになるし、カフェで友達とお茶してるときに店内で流れようもんなら、話のオチ手前だろうがなんだろうが問答無用でイスから転げ落ちてしまう。「茶なんぞ飲んでいられるかボケ」というワケのわからないクレームをつけて出禁になるのが目に見えている。

 

■そう、Seesaw患者の典型的な症状は「聴けない」なのだ。

 

 

■あのイントロカチャッヴーーーーーンが聴こえてくるだけで脳の機能がスーッと停止していき、指先に血が通わなくなり、サビに辿り着く頃には活動限界を迎える。「あ、ダメです今はムリです」となってしまう。やむなくスキップしてしまうこともしばしばだ。

 

 

■でもさ、冷静に考えて、これってすごく勿体ないことなのでは?????

 

 

■キャッチーでありながら美しいメロディライン、楽曲として優れているのはもちろん、普段ラップパートを担当しているSUGAの「歌唱」をここまで長時間楽しめる曲は貴重だ。本人も気に入っているであろうこの作品を、腫れ物をさわるように扱ってしまうのはこちらとしても不本意である。

 

■ほんとはもっとしっかり聴きたい。曲として楽しみたい。しかし心の中の元カノ人格が邪魔をする。頭でわかっていても心がウッ…となってしまうのは何故なのか、その要因はどこにあるのだろう。

 

■それを見つけて向き合えば、ひょっとしてSeesawを楽曲として素直に楽しむことができるのでは?????

 

 

■レッツ究明!!!!!!!!

 

■オデ、シーソー、タノシミタイ!!!!!!!!

 

 

Seesaw克服への道(ドドン)


■まずは改めて聴いてみよう。聴かないことには始まらない。


BTS Seesaw  再生っと…


カチャッ


ヴーーーーーーーーン…

ヴーーーーーーン…ヴン…ヴ

 


ア無理!!!!!!!無理でしたごめんなさい一旦夜風浴びてきます!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

くそっくそっ……もう一度やり直せたら…次はちゃんと好きって言うのに…絶対大事にするのに…ぶつぶつ…ぶつぶつ…

 

 

■なるほどなかなか手ごわい。イントロのなんともいえない物悲しさ、どうして1音目からこんな切ないコードにするんだろう。SUGAさんは罪な男だ。

 

■夜風を浴びて白湯を飲んで、いくらか落ち着いてきたので、もう一度トライしてみる。

 

 

 

カチャッ

 

ヴーーーーーーーーン…

ヴーーーーーーン…ヴン…ヴーーーーーーン…ヴーーーーーン…ヴン

 

 

 

シュガァ

 

 

 

ミ゛ッッッッッ

 

 

 

■踏まれた鳥みたいな声が出てしまった。あーあーあーあーそうだった冒頭にSUGAァが来るんだった勘弁してくれよなんでそんなことするんだよイケズかよこっから進ませる気ねえじゃんよ、てかなんでそんなに声が良いんだよいい加減にしてくれよ喋り声も歌の声も全部いいなあ~~~いいねえ~~~~???本当にいいねえ~~~~???生まれてきてくれてありがとう~~~~~~???????????

 

 

■あまりのことに、生誕に感謝してしまった。感謝の気持ちを忘れないのは良いことなのだけど、今は違うんだ。きちんと曲を聴きたいんだ。聴かせてくれ。先へ進ませてくれ。

 

■このままいくとキリがなさそうので、歯を食いしばりながら何度も聴いてみた。その上で「ここがヤバさの要因だな」と思ったところを書き出してみようと思う。※ぜ~~~んぶ個人の見解です

 

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Seesawのヤバ要因①「追憶」の演出

 

■Seesawは切ない。それは曲の至るところに「追憶」を想起させる演出がちりばめられているからだ。

 

■仕掛けは曲の冒頭、0:01の時点で始まっている。イントロが始まる前に「カチャッ」というカセットテープの音が入る。ユンギペンはこれを避難警報と捉えているきらいがあるが、実はこの演出、リスナーを追憶の世界へと没入させるメチャクチャ巧みな仕掛けなのだ。

 

■カセットテープといえば、ノスタルジーの象徴である。

 

ノスタルジー」の意味とは?使い方や英語・類語を例文で解説 | TRANS.Biz

 

■ノスタルジーとは、過ぎ去った時間・時代を懐かしむ気持ちのこと(TRANS.Bizより引用)

 

■昨今のアナログ回帰の潮流もあり、巷ではレコードやカセットテープの人気が再燃している。最近は「エモい」という言葉に落とし込まれているが、この懐かしさには寂しさ・哀しさ・侘しさなどの感情が伴う。そこには間違いなく「好きだった」という気持ちが織り込まれているのだ。

 

■なんの思い入れもないものに、ノスタルジーは生まれない。故郷に帰ったときや、昔よく行った場所を訪れたとき、なんとも言えず切ない気持ちが溢れて立ち止まってしまうことがあるのは、あの頃の自分が好きだった匂いや情景が蘇るからだ。

 

 

■冒頭にカセットテープを再生するというアクションを挟むことで、曲のなかにメタ視点が生まれる。Seesawには「今まさに関係を終わらせようとする主人公」と、「それを思い起こす主人公」が存在するのだ。リスナーは主人公の思い出のカセットテープを一緒に聴いている。

 

■約10秒間のイントロはザラザラした低音質で、プツプツとわずかなノイズも入っている。レコードの針を落としてから流れる無音部分のようだ(私はカセットの再生機器を持っていなくて音質がどんなもんなのか知らないので、ここではレコードの音質に例える)。ボーカルが滑り込んでくるのと同時に、これらのノイズ達は消えていく。

 

■私はここを、現在と過去の記憶の境界線だと思っている。スーッと回想シーンに入っていくようなイメージ。映画タイタニックも、おばあさんになった主人公が自分の悲劇を語る回想シーンが本編という構成になっているけど、まさにそんな感じ。

 

■感情の上がり下がりに疲れてしまった主人公の葛藤を、すでに結末を知っている私達は諦めの気持ちと「でも確かに好きだった」という愛憎半ばの気持ちで回想するのだ。

 

■イントロには加工された人の声のようなSEも入っている。思い出の中の声だろうか。楽しかった日々の記憶だろうか。

 

■もっと言うと0:08らへんでトントン、ってマイクを置きなおしたときみたいなノイズも聴こえませんか???これには意図があるんだろうか(ただの消し忘れな気もするけど)

 

 

■イントロ良いよね~~~~~って言うためだけにバカの文字数を使ってしまった。いや~~~~~これってSUGAさんが考えた演出なの???!!!ニクいね!!!!!三菱!!!!!!!!!!

 

 

Seesawのヤバ要因②女声コーラスの存在感

 

■Seesawを聴いて、なんでこんなに他の曲と違う類の切なさがあるんだろうと不思議だったんだけど、一番デカいのはこれじゃないかと思う。この人の声がたぶんめっちゃ仕事している。

 

■フィーチャリング以外でここまで女性コーラスを全面に出している曲って、BTSの中でも珍しいんじゃないかな。

 

■最初は味付け程度だったのが、曲が進むにつれて自我をもってどんどん主張してくるのがわかる。2番Bメロ以降はどんどん字ハモリ(ウ~ウ~とかのスキャットじゃなくて、歌詞を言うハモリ)が増えてきて、ラスサビになるともうダブルボーカルじゃんってくらい、めっちゃしっかり歌っているのだ。

 

■この変化の付け方が凄いのと、透明感のある声質で、個人的にめちゃくちゃ好きなコーラスだ。澄んだ色のなかに儚さと芯の強さがある声で、対になるSUGAさんとの相性が本当にやばい。吐き捨てるように歌うSUGAさんの声はどちらかというとザラッとしていて、声質自体は全然違うのに、同じ旋律を歌うときに2つの声が「儚さ」という一点でバチッとリンクするのがたまらない。

 

■サビではほぼずっと同じ旋律を1オクターブ上で歌っている。同じだけ芯が強くて、同じだけ頑固な二人が、全く同じことをそれぞれの場所で考えている感じがする。

 

■All right ~からの、1オクターブ飛んで戻ってを繰り返すメロディ、シーソーの上がり下がりがイメージできて天才かと思った。「ぱんぼくどぇん」と「いじぇそ」のところで、上のミ♭⇔下のミ♭を行き来するんだけど、主人公の声が1オクターブ上がる頃には、一瞬前まで全く同じ高さで同じ音を歌っていた女性は、さらに1オクターブ上に行ってしまう。下がるときも同じ。常に同じ幅を保って移行する。

 

■これが関係が終わるときの心のズレをイメージさせるのだ。思うことは同じなのに、二人の距離はいつも鍵盤11個ぶん離れていて、いくら追いかけても交わらない。隣にいこうと試みても、すぐ隣の音ではぶつかって不協和音になってしまう。このまま歌い続けるしかないのかと思っていたら、ラスサビでどんどん独立していく女性の声。崩れたものをそのままに、別々のフレーズを歌う二人。ああいよいよ終わってしまうんだとリスナーは関係の終末を知らされる。それまでは主人公ひとりの台詞だった「いじぇんくまね(もうやめにしよう)」が初めてふたりの台詞になる。そっと手が添えられるようにオクターブユニゾンが重なり、それが分岐したのを最後に曲は終わりを迎える。


 

■とまあ全て私の解釈だけど、声によるこのへんの表現力がマジで妙技なのだ。聴いてて鳥肌が立つ。

 

 

■この方は何者なのかと思って調べたら、ADORAさんというプロデューサーの方だった。Euphoriaとか134340でもコーラスやセリフを担当しているらしい。流石すぎ。マジで好きです声。

 

 

Seesawのヤバ要因③「はる すん おぷちまん」

 

■「はる すん おぷちまん(できもしないけど)」です。

 

 

■ここが一番ヤバいです。この吐き捨てるような言い方に全部が詰まってると思うんです。

 

■SUGAさんの歌における演技力はすごい。普段ビールやガムのCMであの大根演技ぎこちないプリチースマイルを見せてくれる方と同一人物と思えない。

 

■Seesawのときは歌詞の内容的にも「やってられない」とか「もうやめたい」という投げやりな感情をにじませて歌っている感じがするし、ともすれば冷徹な声に聴こえてしまうかもしれない。なのに、この「はるすんおぷちまん」を聴くと、この主人公のことが一気に憎めなくなってしまうのだ。

 

■きっと油断するとあっという間にくよくよしてしまう人だ。投げやりな態度でいないと、未練に引っ張られるのを自分でもわかっている人だ。いつまでも決断できない自分にほとほと嫌気がさしている。吐き捨てるような「はるすんおぷちまん」に込められているのは相手への攻撃性ではなくて、圧倒的な自己嫌悪なのだ。

 

■「はるすんおぷちまん(できもしないけど)」と「いじぇんくまね(もうやめにしよう)」の声色の使い分け、メチャクチャすごくないですか???

 

■「もうやめにしよう」のほうは明らかに少し安堵があるんですよ。ようやくシーソーから降りられる、という解放と諦めを感じるんですよ。最後の最後に、ちょっとだけ声色が優しくなるんですよ。そういう奴、いるよな~~~~~!!!!!忘れられるかばっきゃろ~~~~~~!!!!!!

 

■あ、元カノ人格が顔を出してしまった。いかんいかん。客観客観。スーハースーハー。

 

■てかこの「はるすん」を頭からダミらせて発声するの、真似してみたらわかるけどめっちゃムズいよね。いちいちテクいんだよなSUGAさん。

 

 

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■さあどうだ!!!ことあるごとに邪魔をしてくる「元カノ人格」を抜いて、楽曲としてSeesawを鑑賞する試み、成功しただろうか。

 

■結果として、これを書くために50回くらい聴いて、改めていい曲だな~~~と50回思った。さっき挙げた3つのポイントも、コード進行もメロディもほんとに綺麗だ。

 

■素晴らしい作品であることに気付けたぞ!!!これって大成功では??!!!ワーイワーイ!!!!!やっぱりいいモノはね~~~~~どんどん聴かなきゃネ!!!!!!!さっそく朝食のBGMにでもしましょうかしら!!!!素敵なお目覚めのお供に!!!!!!!!

 

 

 

 

カチャッ

 

ヴーーーーーーーーン…

ヴーーーーーーン…ヴン…ヴーーーーーーン…ヴーーーーーン…ヴン

 

 

 

シュガァ

 

 

 

ミ゛ッッッッッ

 

 

 

 

 

 

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お先に失礼します。